(元)女子大生の非就職活動ブログ

いまはカナダにいるよ

カニバリストの友人がカーニバリストになった話

 

 

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この話は友人の名誉のために伏せておくべきだと思う。

しかし、戸惑いを隠せず、行き場のない私はここに記すしかなかった。

 

 

プロローグ

 

これは数日前のこと。

友人Aから「話したいことがあるから、会わない?」と連絡をもらった。

 

彼女は10年来の友人であり、私は二つ返事でOKした。

場所は都内の高級レストランで、どうやら個室を予約したらしい。

 

彼女はまだ私と同じ学生である。

「どこにそんなお金があるのか。私はそんな高額は払えない。」と言うと「今度会った時に説明する。私が払うから問題はない。」と言われた。

 

「まあ美味しいものが食べられるのであればいいか」と短絡的な私は何も考えずに承諾したが、今考えるとこれが悲劇の始まりであった。

 

 

 高級レストランにて

 

久しぶりに彼女に会った。一年ぶりであろうか。

彼女は相変わらず美しく、一体どんな生活習慣を送ればそうなるのか甚だ疑問だったが、「なるほど、これは遺伝に違いない。」と私は悟った。

 

彼女が予約した高級レストランは、私が想像していた以上に豪華だった。

まるで芸能人が密会をしていそうな場所。

緊張して冷や汗が出てきた私は「すごい所だね」としか言葉を発することができなかった。

 

個室に通された私たちは、レストランの雰囲気に似つかわしくない、たわいもない話をした。「彼氏はできたのか」「単位はちゃんと回収しているのか」「レストランの店員がイケメン」などたくさんのことを話した。

 

その間、私は注文した料理をここぞとばかりに食べていたのだが、どうやら彼女の様子がおかしい。

 

 

彼女は全く料理に手をつけようとしないのだ。

 

 

「どうして食べないのか」と聞くと、彼女はためらったように微笑むだけで、先ほどの勢いはどうしたのかというほどに静かになった。

「もしかしてダイエット中なのか」と聞くと「それはないよ」と呟く。

 

はてさて一体どうしたものだろうと思う私を横目に彼女はそっと呟いた。

 

 

 

「私ね、カニバリストなの。」

 

 

 

衝撃の告白

 

私はひたすら無言だった。

なんて返したらいいのか分からなかったからだ。

 

カニバリスト、それは人肉を喰らうということである。

私は「トレビア〜ン」と発する人物が登場する『東京喰種』という漫画で人肉を喰らう人間を見たことしかなかった。

 

この無言の空間を消滅させるためにも、私も「人肉はトレビア〜ンだ」と発すべきなのか。決して「トレビア〜ン」だとは思わないが。

 

しかし、先に沈黙を破ったのは彼女の方だった。

彼女は俯いたまま、言葉を発した。

 

 

 

「美味しいもの、あなた食べたでしょう。

 

だから私にも美味しいものを食べさせて。」

 

 

 

私は更に驚いた。そして震えた。

この震えは明らかに恐怖からくるものであると私は確信した。

 

私は今からこの女に喰われようとしているのだ。

 

 

苦肉の策

 

これ以降の記憶はあまりない。

とにかく必死で私は彼女から逃れようとした。

 

まずはレストラン内の店員及び客に声をかけ、「カニバリスト(人肉を喰らうこと)についてどう思うか」アンケート調査をした。

というのも、彼女はカニバリストと言えど、腐っても日本人であり、同調圧力には勝てないと考えたからだ。

 

調査結果は明らかで、全員が全員「カニバリストは悪だ」とした。

この結果を彼女に伝えると「そう。インターネットでも見たわ。カニバリストは悪だって。」と言い、その場で泣き崩れてしまった。

 

 

カニバリスト同調圧力に屈した瞬間であった。

 

 

泣いている彼女を慰めようとしたものの、私に為す術はなかった。

私を食糧として捉えていた彼女を許すことはできなかったからだ。

 

 

しかし、その一連の流れを見ていた60代ぐらいの初老の男性が彼女にこう言ったのである。

 

 

カニバリストじゃない。

 

カーニバリストになればいい。さあ、踊るんだ。」

 

 

その声にハッとしたらしい彼女は、私を置いてその初老の男性と六本木に消えていった。

 

 

それ以来彼女に会うことはない。

今もどこかで踊り狂っているのだろう。

 

 

※フィクションです。