どうしてもミニブタカフェに行きたかった友人
本日「ミニブタカフェに行きたい」という友人のLINEから、20代前半ボブ女二人組こと私たちは大人の街・目黒に繰り出した。
「ミニブタのペットとしての可能性を伝えるために、そのミニブタカフェはできた」
「そのカフェでミニブタを購入できるので、将来はミニブタを飼いたい」
「ミニブタの大きさはこれくらいで、大人になると中型犬くらいの大きさになる」
など、目黒にいるにもかかわらずチェーン店である洋麺屋五右衛門でニンニクの効いたパスタを食べ終えた友人は真剣に話す。
数ヶ月前からずっとミニブタカフェに行こうと言っていた友人は、まるでミニブタが目の前にいると錯覚させるかのような、慈愛に満ち溢れた瞳で「ミニブタは可愛い。本当にミニブタカフェが楽しみだ」と意気揚々と語っている。
そんなミニブタカフェに行くのを楽しみにしている彼女に対し、私はいささか疑問を抱いていた。
なぜなら、友人から送られてきたミニブタカフェのホームページに「予約はこちらから」と記されたボタンがあり、そこをクリックすると数ヶ月の空き状況を見ることができるのだが、どこもかしこも埋まっていたからだ。
私は前日にそのことを彼女に伝えていたのだが、なぜか
「ワンチャン行けるんじゃないかなって、感じてる」
というスケジュールに基づく判断ではなく、いったい何を感じてんだコイツはという感覚ベースの返答をされたため、こちらとしても「……じゃあ、行くだけ行ってみようか」という返答をせざるを得なかった。
しかしミニブタカフェ直行決行日の本日、外は雨。目黒駅からミニブタカフェまでおよそ15分はかかる。
ミニブタカフェのスケジュールが完全に埋まっており、こちらに取り付く島がないことをわかっていてもなお「ワンチャン行けるんじゃないかなって、感じてる」というフワッフワなフィーリングベースで雨の目黒を駆け抜ける気力はこちとら毛頭ない。
もう一度ホームページを開き、ガッチガチに埋まっているミニブタカフェのスケジュールを彼女に見せた。
彼女は「すごい埋まってるね……」と落ち込みながら、行くことを断念する素振りを見せた。しかしその後、こうつぶやいたのである。
「強行突破できないかな」
向かう先はミニブタカフェだ。強行突破するような物騒な場所ではない。ミニブタという「小さなお友達」しかいない目黒の楽園である。その執念、もはや恐怖。
私は小さなお友達ミニブタ、ひいてはお店の人のため、そして雨のなか歩きまわりたくないという自分の意志を尊重するためにも、このミニブタカフェに取り憑かれてしまった友人を阻止しなければならない。必死にWebサイト上を駆け巡った。
そこに書かれていた一筋の光、「当店は事前予約制です」という文字。これでは彼女も手の施しようがないだろう、そう思い「このカフェ、事前予約制らしいよ」と告げた。
すると彼女は「えっ……マジか……」と驚いたあと、
「強行突破できないかな」
とまたもやつぶやいたのである。ミニブタカフェに対する物騒な文字面。店のシステムにまでも牙をむくとは、もはや執念を超越している。
私は「さすがに私たちでもお店のシステムには抗えないよ……」と彼女をうまく諭し、目黒にあるオシャレなカフェに行くことを提案。その後、仲良く茶をしばいたのだった。